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2006年 05月 28日

日仏生活比較学論序説 vol.6 自販機

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「パリと東京ではどちらが暮らしやすいですか」ときかれることがある。
微妙なのは「暮らしやすい」の「やすい」という部分。暮らしやすいを「便利」という点
でとらえるならば断然、東京である。なんと言っても日本にはコンビニがある。24時間
営業、年中無休。朝は撮影の前に、おにぎりとペットボトルを買い、夜は雑誌や漫画を
読み発砲酒を買う。飲食物の調達から情報収集まで全てが可能な場所。毎日クルマ
で移動するカメラマンにとって、そこはオアシスであり社会との接点ですらあった。その
「コンビニ」がパリにはない。コンビニのない生活など出来ないと、東京では思っていた。

しかし、いざコンビニなき都パリに暮らしてみるとコンビニなしでもやっていける。日曜
にはスーパーもデパートも閉店。平日でも午後8時には店を閉じるこの街で、「便利」と
いうことをイコール「暮らしやすい」という基準で考えるている限り、暮らしにくいと感じる
ことも多いであろう。ただ、翻って考えてみるにコンビニで必要でないものばかり買って
いたのではなかろうか。季節ごとに名前の変わるペットボトルのお茶や新商品の数々。
宣伝や広告が視界を埋めつくし、聴覚を痛いほどまでに刺激する。やがて正常な思考
判断力を失った我々の脳は「今日はどうしてもコレを買ってみたい」と指令を下し、今日
も「あれば便利かもしれないが、それほど必要ではないもの」を買ってしまう。

もちろんパリでも広告や宣伝の類いはある。しかし、その情報量は東京の百分の一ぐ
らいではなかろうか。街の中が宣伝の看板と音声に溢れかえることもない。美しく実に
静かな街だ。「暮らしやすい」という意味を無用な情報に洗脳をされずに生きていける
という意味でとらえれば、パリは暮らしやすいといえる。無駄なものを意味もなく買って
しまうことも少ないので、暮らし「安い」ともいえる。

ただ飲まず食わずの撮影の後、夜の10時を過ぎると飲食物の調達は深刻な問題となる。
なんと言ってもコンビニがない街だからだ。へとへとになった時、唯一の命綱は自販機。
暗いメトロの通路で妖しげな光を放つ自販機は、荒海の中で見つけた灯台の明かりの
ように暖かく見える。パリの自販機は紙幣を受けつけてくれない。限られた種類の硬貨
のみ使用できる。硬貨を一枚ずつ上へ押し上げるようにスライドさせて投入する。好みの
商品の番号をボタンで入力すると商品棚がおごそかに手前にスライドしポトリと下に落ちる
仕組みになっている。



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メトロの自販機で売っているのは飲み物だけではない。チョコバーの類い
からスナック、そしてなぜかリンゴまで。このリンゴというところがきわめてフランス的。
パリの子供達の遠足ではリンゴはお菓子に含まれるのであろうか。

自販機がみつかったところで安心してはいけない。壊れていることが多いからだ。硬貨を
受つけなかったり、商品がひっかかって上手く落ちてこないこともある。そのため自販機を
バンバン叩いている人の姿をよく見かける。結局、このリンゴも買えなかった。おかげで
またムダなものを買わなくてすむ。血糖値は下がるが、パリは暮らし「安い」街であるとは
いえる。


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by paris-tsuzuki | 2006-05-28 23:01 | エッセイ