「パリ Paris」 カメラマン都筑 清の写真ブログ

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2006年 03月 20日

フランス CPE(初期雇用契約法)抗議運動拡大の動き vol.4 学生運動から国民的運動へ

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このところ硬い話ばかりで申し訳ない。今日も長文となります。
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<テーマ>
「CPE(初期雇用契約法)に抗議するデモが行われ鎮圧する警察側と衝突。それに反発した
学生等が暴動騒ぎを起こしている」 このように理解している日本の方々がいるのでは、と
思い現場にいたカメラマンとして僕が見た3/18のデモの様子について書きたいと思う。

<学生運動から国民的運動へ>
まず、3月16日のデモとの比較して参加している人達が違う。前回は学生と労働組合の
人達が中心となっていたが、今回は子供を連れた家族から老夫婦まで本当に幅広い年代
階層の人達が参加している点に驚きすら感じた。それは、CPEという26歳未満の人に
適用される法律に対して学生達が抗議するという性格から国民全体の問題として捉えられ
るようになってきたあらわれと考えられる。

<ノスタルジーとしての革命>
では、なぜフランスの人々はこの問題を国民的な運動と考えるようになったのか。それは
ノスタルジーとしての革命をこの国の人々は信じているからだと、僕は思った。

「こんな大きな運動は68年の5月革命以来だ」と、多くのフランス人は口にしている。
では68年の5月革命とは何であったのか。簡潔に歴史を振り返ってみよう。パリ郊外
のナンテール大学の左翼学生の運動をきっかけに、労働組合も巻き込んだ全国的
な運動となり、その後、雇用や教育制度をめぐって総選挙、国民投票がおこなわれ、
老齢となっていたド・ゴール大統領を引退に追い込んだ一連の事件。高い失業率に
高齢で健康問題をかかえる大統領。今の状況と似たような社会的背景がある。その
想いがフランス人のノスタルジーに火をつけたのではなかろうか。68年当時の学生は
38年後の今は60歳を迎えようとしている。そんな彼等がもう一度、自分たちの力で
世の中を変えようという気持ちになっている。ノスタルジーという言葉は単に昔を懐か
しむ後ろ向きな考えと思ってしまうかも知れない。しかし、フランスではノスタルジー
とは歴史に裏打ちされた自信ですらある。古くはバスティーユの監獄を破ったフランス
革命から、近時イラク戦争に反対しフランスはイラク戦争に関わらないとした決断まで。
全て国民のデモ行進や行動によって歴史を創ってきたという自信がフランス人にはある。

「自分達が頑張れば、国を変えることができる。さあ、マニフ(デモ)に参加しよう」

そう信じて、老若男女を問わず様々な人々が3/18のデモに参加していた。

「そんなコトをしても何も変わらない。警察に目をつけられるのがオチだ」という考え方
が染みついていた日本育ちの僕にとって「変えられる」と信じている彼等は新鮮に映った。

以下、3/18の写真レポートを書きます。


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3月18日土曜日、数万人に及ぶデモに参加した人々は午後2時半にパリ14区ダンフェール・
ロシュロー広場を出発しナシオン広場まで約5キロを行進した。


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いきなり目に飛び込んでくるのはホットドッグの屋台。行進の前にまずは
腹ごしらえ。ソーセージの焼ける香ばしいにおいが食欲をそそる。こんな屋台が
何軒もでていて、あたりはまるでお祭りのような盛り上がり。大きなライオンの像に
人々は手をかし合うようにして登っている。


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もちろんマニフ(デモ)の主役は大学生から高校生。嬉しそうに
元気いっぱいの声をはりあげる。


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沿道からはお母さん達が手をたたいて応援してくれる。
傍観を決め込む人もいるが、人それぞれ、がフランス流。


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昼間から顔を隠した連中も徒党を組んでナシオン広場へと向かう。


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ありとあらゆる人種、階層の人達が参加している。


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恋人達も自分達の未来を信じてゴール地点のナシオン広場を目指す。


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ナシオン広場の中央で夕陽を浴びながら反CPEの三色旗を掲げる。
ビール片手に旗を振ってみせる男性はいかにも平和的でなごやかな様子。


と、ここまでの文脈と昨日のクルマが炎上するシーン。いったいどのように結びつくのか。
まずは、以下のナシオン広場の地図をご参照いただきたい。


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これがナシオン広場。直径約200メートルに何本もの道路が交差する
ロータリー状の交通の要所でもある。いわゆる「暴動」 あるいは 「警官隊との衝突」と
表現される区域は赤マルで囲んだ直径約30から50メートルの場所だけの話。
ゴール地点に着いた各団体はシュプレヒコールとあげたり、音楽を奏でたり、あるいは
友達とビールを飲みながらくつろいでいる。
しかし、赤マルの箇所では何やら大きな騒ぎ声が聞こえる。多くの人達は「また始まった」
あるいは遠くから何となく眺めるといった具合。まあ、人それぞれだから、という感じ。


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大きな騒ぎ声に「何事か」と
僕は声のする方へと駆けつける。

そして、このあり様だ。

悲しいかな、カメラマン根性という奴で
ドラマティックなシーンだとばかりに、
どんどん近づく。顔に熱を感じながら、
燃え盛るクルマを撮る。

別に僕ひとりが英雄的な行動をとって
いるわけではない。他のカメラマンも
この光景をある種、撮らされているのだ。


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放火行為に見かねた警官隊が鎮圧にでる、という構図。

ここで、僕が現場で見て来た個人的な印象を書きます。
ある種のやらせ的「最も過激で危険なゲーム」なのではなかろうか。

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「CPE(初期雇用契約法)に抗議するデモが行われ鎮圧する警察側と衝突。
それに反発した学生等が暴動騒ぎを起こしている」と理解している人がいるのではないかと
最初に書きました。あるいは多方面で迫害されてきた少数の移民が鬱憤がたまってついに
暴動にいたった、という見方もあるかもしれません。ただ、僕が現場で見たかぎり、「コレ」を
やりに来た人はコレ目当て。最初から顔を隠してデモと一緒に会場に入る。投石用の石や
ビンを用意して、あるいは現地でビールを買って飲んだ勢いで警官隊の方に投げています。
周りにあるゴミ箱やサオなどを手当たり次第に投げてくる。また、一種の度胸試し的な性格も
あるらしく、ののしる言葉をあげながら警官隊の列にゆっくり近づいてくる。そしてギリギリの
ところで生タマゴをぶつけて逃げてくる。わかりやすく言うと、警官をオチョクるスリルを彼等
は楽しんでいる。また、それを見せるためにカメラマンの前でパフォーマンスをして見せる。
どうやら日本をはじめ各国に報道された去年の暴動騒ぎは彼等にメディアにのるという快感
を覚えさせた感すらある。


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チョっとやり過ぎた人は捕まります。催涙ガスもでます。


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このように警官隊とひと暴れすること自体が目当ての人達との実に
危険きわまりない過激なゲームに近いことは行われています。しかし、それは今回の
CPE問題の本質ではなく、68年5月以来、何十年に一度というフランスの歴史の転換点
となりうる動きが今、パリで起きているということを僕は伝えようと思いました。


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少なくとも、こんな笑顔でマニフに参加している学生達が暴動行為に発展
するはずもないと僕は現場で見て思った次第です。

また、長くなってしまいました。

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by paris-tsuzuki | 2006-03-20 08:36 | ジャーナリズム


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